top of page

園芸説話集 捨草
むかし、ある人が庭の花壇を美しくせんと、春の訪れを前に雑草をことごとく引き抜き、ゴミ捨て場の脇へと打ち捨てた。
「これにてわが庭は清らかになった」と、その人は満足げに眺めておった。
しかし春風が吹き始めると、丹精込めた花壇はひっそりとしたまま。一方、見向きもされなかったゴミ捨て場の脇からは、色とりどりの花々が次々と顔を出し、道行く人の目を楽しませたのである。
捨てられた草の根には、すでに花の種が宿っておった。踏まれ、蔑まれた場所であっても、命は己の時を待ち、やがて咲くべき場所で咲いたのだ。
庭の主は、しばらくその光景を呆然と見つめ、やがてひとつ、深くため息をついたという。
「価値なきものを捨てる者は、価値あるものごと捨てておる」
bottom of page
